平成27年7月某日、時刻ふたまるさんまる、仕事を終えた私は旧道を通り家路を急いでいた。
我がブルーバードのすぐ前方にはアルト・ワークスが走っていた。
そのリアウィンドウからは、リアピラーに装着されたクスコのタワーバーが、そしてその奥の運転席にはフルバケットシートに身を沈めた若者の姿が見えた。
世の中の本格スポーツカーやハイパワーマシンに乗る者達からは蔑みの対象となりがちなこの種の軽マシンを前にして、私は敬意と憐憫の入り混じった思いにとらわれた。



前方のアルトワークスに続き旧道の交差点を右折。介護施設の横を抜けると、その先は2マイルにわたる峠道だ(ロードスター クラウン ポルシェ とのバトル参照)。



”少しヤツと遊んでみるか・・・”



閑散とした夜の峠でバトルが始まった。
私は前を行くアルトワークスに迫るべくブルーバードのアクセルを踏み込んだ。
アルトワークスの速度が徐々に上がってゆく。
一流の走り屋であれば後方の敵に対して常に警戒を怠らない。やはり我がブルーバードの交戦意思はアルトワークスによって直ちに感知されたようだ。
道が登り8%勾配ときつくなった。ターボのアルトワークスはそこを40ノットを超える速度でアセンドしていった。



”うわ、ヤツはロケットか・・。本気出しやがって、ちったあ手加減しやがれ・・” 



私は2速にキックダウンすべくアクセルを踏み込んでアルトワークスを追うも、ひとひゃくフィート以上引き離されてしまった。
本気仕様のアルトワークスにノーマルのブルーバードがかなうはずがない、無論私は初めから知っていたのであるが。



道は峠の頂上を過ぎて下りに入った。
私は秘策を繰り出した。車線をフルに使いコーナーをショートカットするのだ。
対向車がライトで確認できる夜間のみ使える、いわば禁じ手である。



アルトワークスとの車間の開きが止まった。
振り切れない相手に対しアルトワークスのドライバーも少しは動揺したであろうか?



しばらくすると前方に1台の一般車が現れアルトワークスは減速。我がブルーバードはまもなくアルトワークスに追いついた。



”さあ、お前の本当の価値を見せてもらうぞ。俺をがっかりさせるなよ・・”



はたしてアルトワークスは一般車に迷惑をかけないよう十分な車間をとっていた。
これは自覚的(意識した)な挙動である。そうでなければバトル中の興奮・焦燥した精神状態から前方の一般車を自然に煽ってしまったり無理に追い抜くなど不安定な挙動に陥るのが愚か者の常だからである オデッセイBMW650インプレッサ とのバトル参照)。




彼が示した走り屋の矜持に呼応すべく、私もアルトワークスと充分な車間を置き、その後に続いた。



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