2013年4月某日、私は33Rを駆り、自宅より25マイル・サウスウェストのノーヴェンバーホテルに出向くべくマイク自動車下り線に乗った。マイクICのランプから本線に合流する時、シャンパンゴールドのBMWカブリオレが高速で走り去るのが見えた。思わず右足に力がこもる。



本線に合流、私がBMWを追って
33Rを80ノットまで加速させるも、当機の存在を即座に察知したBMWもさらに速度を上げたため、両者の車間が狭まることはなかった。
しかし、BMWは1車線の自動車道で前方を
一般車の列に阻まれ、我が33Rが追いつく格好となった。
    

          


BMW 650i(F12)
カブリオレ。4.4L V8ツインターボは、実に450馬力のパワーと66.3kgものトルクを発揮 。250q/h以上のクルーズが可能なBMWの最高級オープン4シーターである。
追い越し区間がまもなくやって来る。闘いの前のイヤな待ち時間だ。650iの一般車に対する迫り方から、ドライバーの焦る心理状況が見て取れた。2車線になるや否や、650iは全開加速を開始。加速勝負で少しでも優位に立つため、私は追い越し区間が始まる少し手前から前を行く650iとの車間を使い助走をつけた。久々のガチンコバトル開始。60ノット、34500回転からアクセルをベタ踏みする。アクセルを踏みぬく反作用で腰がシートに押し付けられる。            


          



” ア、アカン!! 引き離される・・・ ”



650iの66.3kgのトルクは、BMWM6V10をも凌駕し、ATとの組み合わせもあってか、その立ち上がり加速は半端なく凄まじい。一方、我が33Rは5000回転以下のトルクがスカスカであり、そこに達するまでに我慢しなければならない ”待ち時間”存在する。私は国産リミッター手前まで3速いっぱいで引っ張り、ギアを4速にシフト。前を走るBMW650iカブリオレを追ってひたすら踏み続ける。国産リミッター域を超えてからが勝負である。ここから先はトルクの大小は関係ない。クルマの馬力とドライバーの根性で勝負が決まる。普段、格下を相手にする時は余力を以て様々な奇策を弄する私だが、今回そのような余裕はない。国産チューンドカーは負ければ何も残らない。だから意地でも負けるわけにはいかない。



    


この区間は、見通しの良いストレートであるものの非常に路面のアンジュレーション(うねり)が強く、普段ゆっくり走っていてもハンドルをとられて怖い思いをする場所であった。無論この速度で突入したのは初めてである。マシンがあらぬ方向へ飛んでいきそうで怖い。ボディーに入力される激しい衝撃は確実に33R
の寿命を縮めるであろう。だが戦いの最中そんなことはどうでもよかった。私がギアを5速にシフトした頃、650i
ようやく速度がサチュレートした。正規ディーラー仕様のリミッターが作動したのであろうか。それともオープンボディのFRでこの路面をこれ以上攻める続けることは無理なのか。




”どけ、道をあけろ・・・。行ける! ” 




私は暴れる33Rの手綱を握り締め、グリップが破綻しないことを祈りつつ、左車線から650iカブリオレをぶち抜き、そして再び追い越し車線に移った。650iカブリオレはすぐに戦意を喪失し、急速に両車の車間が開いていった。



” 下らない意地の張り合いじゃないのか? 勝ってお前は満足か? ” 



私は震える手でハンドルを握りしめ、しばらく自問自答していた。




               
                             
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