2012年11月某日、インディアブラボーでの夜勤を終えた私は、いつもの通り高速道路に乗って帰路に就いた。インターでETCを通り抜けた時、彼は既に我がGTRの背後にぴったりと張り付いていた。不意に大きな車にベタ付けされた私は、驚きと恐怖で心臓のリズムを一瞬狂わされた。





ETCを抜けて加速体制に入る。
我が背後に迫るBMWも、まるで逃げても無駄だと言わんばかりに、その詰めた車間を拡げることなくその大きな躯体を加速させ、プレッシャーをかけてきた。並々ならぬ殺気をプンプン漂わせている。



” なんだよ、コイツ。BMのX3か? それともX5か? ちょっとばかりいい外車に乗ってるからって、調子にのりやがって・・・”
僻みをこめて悪態をついた私であったが、そのまま普段通りの運転を続けるよう努めた。2マイル先の追い越し区間までは片側単車線の道である。仮に一撃離脱を図ってフル加速しても、一般車でつかえてしまうのでBMWに追いつかれる可能性が高い。ペースを上げればどうか? その場合でもBMWが矛を収めてくれるとは限らない。第一、急いでいるBMWに利するだけである。こちらには一切メリットがない。従って、まずは相手のプレッシャーに対して反応せず、自分のペースを守るのがベストな選択である。
多くの場合、そのような肩透かしを食らった相手は、 ”こいつは後ろを見てない鈍いヤツだ”とか 、”交戦意思のない大人しいヤツだ”などと油断するものである。



追い越し区間がやってきた(vs フェラーリ458 とのバトル参照)。私は前方の一般車を何台かパスするため、右車線に移り加速を始めた。
と、ここで今しがた我が33Rと車間距離を空けていたBMWが一気に速度を上げて再び激しく煽ってくるではないか。どうやらBMWは車間を空けて助走に利用するという戦技を繰り出してきたようだ(BMW650i 650iF12 とのバトル参照)。 無論、私は右車線をキープしており、左車線にも一般車が散在しているので彼はどうすることもできない。
追い越し区間が終了し、我が33Rを追い抜くことに失敗したBMWは、より一層激しくプッシュしてきた。

 

さらにしばらく進むと、マイク自動車道本線に合流するタンゴICにやってきた。BMWも私と同じ下り線に向かうようだ。回り込んだコーナーを抜けてランプ上を加速。本線に合流する。私に続いてBMWも本線に乗った。
左車線は一般車が散在しているので右車線に移ろう。私が加速しながらサイドミラーでちらと確認すると、BMWも何とかして我が33Rを出し抜こうと加速しながら右車線に移ろうとしていた。



” なっ、速い!  あの図体で・・・”
接触しそうな状況をクリアするため、私も本気踏みで加速し、BMWを引き離したことを確認して右車線に移った。
出鼻をくじかれたBMWは、未練が残っているのか、依然として我が33GT-Rを煽ってくる。
それにしてもBMWがみせた加速は、SUVとは到底思えない強烈なものであった。X3にMシリーズはあっただろうか? 私はしばらく考え込んだ。  
いずれにせよ、その速さが彼の自信となり攻撃性に結びついていることは容易に理解された。



道はシエラ峠登り区間となり、3マイルの間に600フィート以上アセンドしなければならない状況となった。
このままBMWに煽らせている限り、つまり負けを納得させない限り彼は我が33Rを煽り続けるだろう。
かといって、こちらが先行のリスクを背負ってまで勝負しなければならない相手でもない。このような状況下では“教育的バトル”が功を奏する場合が多い。





BMWに先行させて後ろからお手並みを拝見しよう。
私が左車線に移るやいなや、彼はわがGTRを追い抜き、さらに加速を開始。私はふたたび右車線に移り彼の背後につけた。そのリヤエンブレムには、X3とあった。
X3はそこからさら加速し、予想通り国産リミッター域を超えた。これが彼の自身の源であったのだ。
普段は緩やかな300Rの左コーナーが非常にきつく感じる。彼は左車線寄り、センターを割ってその300Rをクリア。X3ドライバーの切羽詰まった心理状況が背後から観察できる。国産リミッターを超えても相手を振り切れない状況は、X3にとっても想定外だったのだろう。
ついにX3は左に車線変更。お約束通り、わがGTRはそのBMW X3をぶち抜いた。





その後、右車線も混んできたのでペースを落としつつ山をディセンドしたのであるが、さすがにBMW X3は、もう我が33Rを煽ることなく大人しく後をついてくるようになった。“教育的バトル”著効せり。
帰還してからX3のスペックを調べてみると、3Lターボ、3L自然吸気、2Lターボ、加えてディーゼルがラインナップされている事が分かった。今回戦った相手は、306PSを誇る3Lターボに違いなかろう。道理でなかなか速い訳だ。
  
    

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