JZS147 ARISTO vs E63 BMW 650i


2007年ある日の朝、私は自宅から25
マイルノースウェストのインディアブラボーに出向すべく、JZS147アリスト・ターボ(ブーストアップ350HP
)に乗り、インディアチャーリー自動車道片側一車線の道を走っていた。



3マイル先にある追い越し区間を前に、私は徐々に緊張の度合いを強めていた。
なぜなら、我がアリストの背後に一台の不気味なドイツ車、すなわち車幅の広い、ヌメリとしたマスクを持つ
BMW650iクーペが控えていたからだ。



                        


6シリーズはBMWのフラッグシップパーソナルクーペである。初代6シリーズは世界で最も美しいクーペと称され、名車M6やアルピナB7ターボなど、自動車史に残る派生モデルを生み出した。今回のE63型は初代の生産終了から14年の時を経て2003年にリリースされたモデルである。



比較的交通量の多い片側1車線の同区間で我がアリストを無意味に煽るほど無粋ではなかったが、彼の位置する車間30フィートの距離は完全にロック・オンの射程範囲内である。ドライバーはノーネクタイのスーツにサングラスをかけた30〜40代の男で、助手席には女が乗っていた。
BMW650iの威力に屈して当機が道を譲らぬ限り、どうやら彼と一戦交えることは避けられそうもない。



たしか敵機のエンジンは 4,000〜5,000cc の自然吸気で、馬力は300台半ばではなかっただろうか?
車重の軽いアリストが、まして国内最強の2JZ-GTEターボ・エンジンが、いくら大排気量とはいえ自然吸気(エヌ・エー)などに負ける訳がないと、私は闘志をたぎらせた。


一方、私は自分のテンションを650iに悟られぬよう、慎重に前を走る一般車との車間を広くとり、一定のペースで走り続けた。
これは勿論、こちらに戦闘をする気がないと思わせて敵の警戒心を解くために行う偽装作戦であると同時に、追い越し区間で最大限の速力を出すために必須となる戦技である。


            



追い越し2車線区間がやってきた。

やや手前の地点から、前を走る一般車との車間を利用して一気に助走を開始し、2車線になるや右車線に移り全開で加速。
作戦は成功し、一瞬のスキつかれた背後のBMW650i は大きく出遅れた



”ヨッシャー! 引き離したッー ”



私は勝利を確信し、アクセルを踏み抜いた。
メーターの針はぐんぐん下がり、国産リミッター域を超え、ついにはオーバー110ノットの高速域に飛び込もうとしていた。

ところが、ルームミラーに目をやると、なんと信じられないことに、BMW650i が背後から凄まじい勢いで迫ってきているではないか。



 なっ!? うわぁ、マジかよ・・・  なんてトルクしてやがんだ・・・ 



最初の奇襲で我がアリストがリードを得たにも関わらず、BMW650iもすぐさまアクセル全開で立ち上がり、追いついてきたのだ。
しかし、まもなく追い越し区間は終了し、一般車列が現れたために我々は減速した。




外敵からの防衛に一応成功したと考えているものの、もう少し2車線区間が長かったならば、我がアリストは650iに撃墜されていたかもしれない。
残念ながら私のブーストアップ仕様のアリストではBMW4.8L V8の図太いパワー・トルク(367HP50kg)に、一歩及ばなかったのである。
大排気量ジャーマンエクスプレスと一戦交える時は、相応のマシンと覚悟が必要であると私は痛感した。
  

             


 
                          
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