マイク自動車道下り線片側一車線の道(山間部)を前車に続いて走っていると、後方から黒いアウディが1台、急速に接近してくるのを確認。私は強い緊張に包まれた。
見慣れぬアウディであったが、スポーツカーのように幅広で車高の低い躯体から発せられる無言の威圧感から、アウディSあるいはRSであることは直ちに理解された。



御多分に漏れず、アウディS5は我が
33GT-Rに近づくや否や、後方から激しく煽ってきた。
残念ながらこのS5とはやり合わねばならぬ運命にあるらしい。


         
           アウディS5 4WD  4.2L V8 自然吸気  354馬力 44.9kg 


やがて登坂車線がやってきて道が2車線になった。
車列先頭の遅い軽自動車を抜くために、前方の車たちが追い越し車線に一斉に出て、用が済むと1台また1台と左車線によけていく。
この“待ち時間”の間、アウディS5は我が33Rの後ろにベタ付けしてきた。



ようやく前がオールクリアになりアクセルを踏み込む。まずは腹の探り合いも兼ねて、じわりと80ノットまで加速。
S5はオラオラ、早くどけコラ、と言わんばかりに我が33のテールにぴったり張り付いてくる。
80ノットも出しているのに満足して頂けないのか? ではやむを得ない。
私はアクセルを床まで踏み込み、2基の大径タービンに仕事をさせた。峠区間の登りとはいえ、瞬時に我が33Rは国産リミッター領域に達し、S5を引き離した。
最近
プラグ とオイル交換をしたRB26が、モーターのようにモリモリと良い音をたてる。きちんと必要量のガソリンが噴射されている湿り気のある音だ。



S5も350馬力のV8に鞭打って必死にくい付いてこようとしている。
4200tの自然吸気エンジンであるS5のスペックを調べると、トルクが比較的細く、高回転でパワーを絞り出しているようだ。
特性として最高速重視であることがうかがい知れ、立ち上がり加速自体は比較的おとなしいのかもしれない。


         


前が一般車で詰まったので減速するとS5が追いついてきたが、未練が残っているのか再び我がGT-Rの背後から煽り始めた。
そこから10マイル先に比較的長い追い越し区間が存在するので、そこでもう一度勝負しようと楽しみにしていたのだが、残念ながらアウディS5は手前のインターで下車してしまった。



片側1車線の高速道山間部という状況下では、決着をつけることが難しく、繰り出せる戦技は心理的効果を伴うものに限られる場合が多い。今回、私は前方がすぐに詰まることは知りつつも、屈辱的に車間を引き離すことで無礼なS5に対してのカウンターパンチを浴びせることを狙ったのである。与えられたステージの範囲内において、最大どれだけの攻撃が敵に対して可能かを判断した結果である。



一つ注意すべきは、これはオーバー500馬力のGT-Rだから可能なお遊びであるということだ。
国産ハイパワー車であっても、高速道でうかつに大排気量ドイツ車に手を出すと返り討ちに合う危険性が高いことを、私はこれまでの経験(vs E550650i) で思い知らされている。
オーナー達は様々な経験を経てドイツ車にたどり着いており、超高速域は彼らが確信犯的に仕掛けてくる領域であることを忘れてはならない。



                          
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