アウディS4

もともと洗練された上品なイメージのアウディであるが、プレミアム路線に進んだ最近は ハイパワー+4駆を武器にメルセデス・ベンツ並みに高速道でハバを効かせていることが多い。ここに挙げる戦例には及ばずとも、A3・A4あたりとの小紛争まで含めると 我がGT-Rとアウディとの戦闘件数は最近際立って増加傾向にある。


2013
年の某日、仕事を終えた私はGT-Rに乗り 雨の降るインディア・ブラボー市の国道バイパスを通って帰路についていた。
そこへ後方からブルーのアウディS4(ワゴン,3.0L,333PS)が接近し、我がGT-Rを追い抜いて行った。
4本出しのマフラーにぶっ太いタイヤなど、見る者が見れば明らかに”S”と分かる迫力を醸し出している。

              
        


そのS4は先を急いでいるのか一般車を煽りながら傲慢(ごうまん)な走りをみせていたが、夕刻で道が比較的混んでいるため思うように先に進めない様子であった。
やがてアウディはヤンキーICでインディア・チャーリー自動車道に乗り、それに続いて我がGT-Rもゲート入りした。
面白いことになりそうだ。



田舎なのでしばらくは一車線が続き、2マイル先に追い越し区間が存在する。
追い越し区間がやってくると、前方がオールクリアとなったアウディS4はすかさず右車線に移り加速を開始。
予想通りの展開である。我がGT-Rも後に続く。
S4は比較的短い追い越し区間できっちり国産リミッター領域まで加速。かなり速いが我がGT-Rもきっちり後をつける。
この追い越し区間は0.8マイルと短く、決着をつけることができないのはあらかじめ分かっていたため、闘志をむき出しにして煽るなど無粋なことはしなかった。
決闘の瞬間まで慇懃なステップを一つ一つ踏んでゆく騎士道の過程を楽しもうと思ったのである。
追い越し区間が終わると、前方に一般車が現れ、我々は減速した。



        


やがてタンゴICでマイク自動車道下り線(vs BMW5ワゴンパサート2.0との戦い参照)に合流すると、アウディS4の猛烈な走りが始まった。
時々追い越し車線を塞ぐ遅い車がいてなかなか速度がのらなかったが、Nシステムを抜けて峠の上り区間にさしかかる頃、アウディ前方がオールクリアーになった。
アウディはウェット路面をものともせず、ゆるい上り勾配を100ノットまで加速。
さすがに速い。やはりこの辺がドイツ車をナメてはイカンと言われるゆえんであろう。
路面に水たまりは無いのでハイドロプレーニングを恐れる程の状況ではないが、我がGT-Rもラフなアクセルワークは厳禁である。



そろそろサチュレートしたかなと思われる頃、S4との車間を少し詰めてやると、ようやくS4は左に車線変更。
私は慎重にS4を追い抜いた。
状況は高速道峠の上り、緩やかなつづら折れのコーナーで谷にかかる大きな橋の上、その路面の継ぎ目には滑りやすい鉄板が存在する。
雨の中そこを国産リミッター域にちかい速度で走るという極めて危険なバトルなのである。



   


そのあとアウディS4は当然のように我がGT-Rの背後に貼り付いてきた。ここでパワー差を見せつけようとアクセルを踏み込むのは危険である。
こちらがリスクを請け負う必要はない。冷静に考えて、あえてペースを落とし、自分の安全を確保するくらいの方が良い。
無論、これはアウディS4が当機を抜き返すアグレッシブさを持ち合わせていないことをこれまでの戦いの中で既に見抜いているからこその極意である。
アクセルを踏み込むのはトンネル内のストレートなど、比較的安全にパワーを引きだせるところだけで良いのだ。
これは実際のレースでも行われる戦技の一種で、先頭を走る者は次席の者が追い越せないギリギリのレベルまで速度を落として走ることで安全を確保するのである。



この戦技を行った時、敵の反応は2通りに分かれる。
未熟者の場合、勝機はまだ残っていると錯覚して攻撃を続けてくる。手練れの者であれば遊ばれていることが分かり、それ以上無駄な闘いを続けようとはしない。
やがて背後のアウディS4は徐々に戦線を離脱していった。


             
                         
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