車で高速移動する機会の多い私はこれまで幾多の戦闘を経験してきたが、敵の大多数を占めるのは圧倒的な性能で路上の覇権を目論むドイツ車勢である。
ドイツ車は、カタログ上の馬力は控えめであっても実際のスペックはそれを大きく凌駕するほどパワフルであると諸家が述べているが、この点に関しては私も同意見である。
国産車の場合、スカイライン
GT‐Rのようにストック状態でカタログ値を超える事例もあるが、100系ツアラーVやスバルの2Lターボ勢のように280PSを謳っていながら実質はそれを下回る事例も少なくなく
、カタログスペックと実パワーの解離は意外に大きい。


     



2008年某日、私は JZS147アリスト(350PS仕様)でマイク自動車道上り線の哨戒任務にあたっていた。シエラ峠を65ノットでクライム中、前方ふた百フィート走行車線上にブラックカラーの
VWパサート(2Lターボ、200PS)を発見。我がアリストとパサートとの速度差は15ノット。



と、ここでパサートが前車との距離が詰まったため、追い越しをかけようと車線変更のウインカーを点灯させた。
しかしパサートはすぐに接近中の我がアリストに気付いて車線変更を断念してブレーキング、当機が追い抜くのを待つことになった。
私はアクセルを踏み込んで、速やかにパサートと前方の一般車を追い抜いた



     

 
ほどなくトンネルの連続する区間に至った時、なんと今しがた追い抜いたパサートがヘッドライトを煌々とたいて猛烈な速度
で追いついて来るではないか。
即座に臨戦態勢に入るものの、今度は私が前方の一般車に阻まれ加速が間に合わず、右車線よりパサートに追い越されてしまった。
先ほどのことを根に持っているのだろうか。



追い越されるや私も右車線に移り、パサートへの追撃を開始。パサートは羊の皮を脱ぎ捨てアクセル全開で逃げる。こちらも全開で追いかける。国産車などリミッター域を超えればついてこれないだろうとパサートがタカをくくっていることは明白であった。それ故にこちらも意地でも負けるわけにはいかない。
カタログスペックの上で200PSに過ぎないパサートは、驚いたことに、120ノットまで我がアリスト350HP
とほぼ互角の加速を見せた。



”一体、なんという速さだ。これでたったの200PS? ウソだろ。もしアリストでなかったら・・・” 

 

120ノットを過ぎてパサートはサチュレートし、ようやく諦めたのか左に車線変更。私が追い越しを執行すると、パサートは速やかに戦意を喪失し減速した

カタログスペック以上の実パワー、高速域に合わせたギア比、高速安定性。加えてオーナーも高速走行に何がしかのコダワリを持っている場合が多い。
2リッターターボという比較的平凡なドイツ車相手に思いがけず苦戦した一番であった。






                              
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