2007年某日、インディアブラボーに向かうためアリストで市内の環状線を走行していると、W220ベンツS55AMG(後期型)を発見。


  


スーパーチャージャーで過給される5.5リッター V8は実に500PS、71.4kgを発揮。S65AMGがリリースされるまで、ベンツSクラスの最高峰に君臨したモデルである。
スペックだけなら同時期のS600L(5.5リッター V12ツインターボ 500PS 80kg)に劣るも、V8ゆえのノーズの軽さ、走るために強化されたシャーシを以て抜群の戦闘力を誇る。



交差点で停車しているS55AMGの18インチホイールのスポークの隙間をチラリと見ると、AMG専用のデカい8ポットキャリパーが収まっていた。どうやら本物の後期S55AMGで間違いないだろう。車内にはスーツを着込んだ紳士が1人、ハンドルを握っていた。この時点でAMGとの戦闘を予感した私は、4点ハーネスを装着し、体を締め上げた。



私の予感は的中した。S55はマイクICに進み、ETCを抜けて上り線ランプに向かった。
S55AMGは本線に乗るや追い越し車線に移り、王者のクルージングを開始。
我がアリストもS55に気配を悟られないよう十分車間を空けて後を追った。



ここで前方がオールクリアになった。そろそろお遊びを始めよう。私はS55の背後に迫り、車間をつめた。
S55の速度が上がり始め、国産リミッター近くに達した。
我がアリストもしっかり喰らい付いてゆく。まだこちらにも余剰出力が残っている。



S55のテンションも上がり、時々現れる追い越し車線の一般車に対してもキツイ煽り方になった。明らかにS55はイラついて焦っている。
2台は連なったままキロICを通過し、シエラ峠登りに突入した。一般車が多いので、まだ本気の勝負はできない。
アクションは起こさず、ただ喰らい付いて行く。



峠を越えてトンネル内に入ると、予想通り一般車は減少し、いよいよ本格的にS55AMGが踏み始めた。
S55のマフラーからかすかな黒煙が広がる。と同時にS55はリミッター域からさらに怒涛の如く加速。



” うわッ、マジか・・ 速えー ”



少し引き離されたが、こちらもアクセル全開で追いかける。
我がアリストの2JZ−GTEではスペック的にS55に及ばないが、S55にも135ノットで作動するスピードリミッターがある以上、始めから勝負を諦めてかかる必要などない。
両者の速度が130ノットを超えた頃、ようやくS55AMGの背後をとることができた。
トンネルとトンネルの間は深さ200フィートの谷にかかる橋であり、ほとんど空を飛んでいるような感覚であった。


  


この速度域になると、4点ハーネスで体をシートに固定することのありがたみが感じられるようになる。
いくらS55AMGのボディ剛性が強かろうが、ノーマルの3点ベルトでこの領域に立ち入ることは、ドライバーにとってやはり不安であろう。



じりじりとS55に迫る。とうとうS55は戦意を失い、左に車線変更して失速。
我がアリストは、S55を追い抜いた。


  


その後、S55が再び襲ってくることはなかった。
しかし、先行した当機がS55を完全に引き離すほどの高速をキープすることも不可能であった。
本バトルは私から仕掛けたものである。タンゴICで降りる時、礼儀として挨拶だけはしておいた。




               
                              
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