2013年某日、私はキロICよりマイク自動車道下り線をベクター270に向けて55ノットで巡航していた。
そこへ後方より1台の車がライトを点灯させて、ただならぬ速度で接近してきた。




  トヨタ カローラ・フィールダー


” なんだ、営業カローラか。 ほっとこう・・・ ”





しかし、その後方にはもう1台の車がヘッド・ライトを燦然と輝かせて迫っていた。
連なった2台の猛烈な速度から、彼らが交戦状態にあることは第三者の私にも直ぐに理解された。
緊張が走る。



アウディA6 3.0クアトロ(V6 スーパーチャージャー 290PS 42.8Kg)




“ アイツら、やってやがるな・・・。これは面白ぇことになりそうだ  ”



カローラ・フィールダーが当機に接近し、追い抜いて行った。
私は前方の一般車を追い越すフリをして車線変更し、カローラ・フィールダーとA6の間に割り込んで戦闘にインターセプトした。









緩やかなつづら折りを抜けて、3台は2マイルにも及ぶ長いストレート区間に突入した。
道は空いており、ドライで風も吹いていない。
前を行くカローラ・フィールダーの速度がじりじりと増加し、ついにリミッターがあたる100ノットに達した。



平時であれば100ノットも出せば十分に追い越し車線を独占しうる。
しかし残念ながらドイツ車との戦闘においては、国産リミッターの作動する速度は闘いのスタート地点に過ぎない。
格下の国産車でアウディA6と張り合う根性に敬意を表しつつも、アウディとの戦いを進めるため私は左車線からカローラ・フィールダーをパスし、ブチ抜いた。



すると、私の後に続くアウディA6も当然の如く左車線からカローラ・フィールダーをパス。
そしてA6は、そのまるで宇宙船のようなエレガントな車体を我が33Rの背後に接近させ激しくアオってきた。
どうやらA6はカローラ・フィールダーに対しては隠していたその牙を、我がGT-Rに対してむき出しにしたようだ。



予想通りの展開になった。
この状況まで来て自ら矛(ほこ)を収めるドイツ車は少ない。
ドイツ車オーナーにとって、この速度域で挑戦してくる国産車の小僧に対しアウトバーンで鍛えられたドイツ車の高性能を見せつけることは隠微(いんび)な楽しみであり、それでこそ高額なプライスを払う価値があるからである。



シフトダウンを億劫がって5速に入れたまま闘って敗北した
ベンツE320とのバトルの前轍を踏まぬよう、私はギアをきちんと4速に落してアクセルをべた踏みした。
さあ、ついてこれるかアウディA6よ。



我がGT-Rの車体は一気に120ノットを超えて、5速にシフト。
何か事が起きればひとたまりもない速度域だ。
しかし、私の仕事は粛々と踏み続けるだけだ。必要な速度域に到達するという任務を遂行するだけだ。
衝突してくる虫により、瞬く間に我がGT-Rのフロントガラスが汚れてくる。



120ノットあたりまで奮闘していたアウディA6だが、ルーム・ミラーに映るその姿はやがて小さく消えていった。

        
                              
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