vs VOLKSWAGEN PASSAT W8



2006年のある夏、オスカー自動車下り線キロSA付近を JZS147アリスト で巡航中、後方から1台のドイツ車がかなりの速度で接近してきた。





その正体はフォルクスワーゲン・パサートであった。
パサートは我がアリストの後方に張り付いてプレッシャ−をかけてきたので、私はひとまず左に車線変更して道を譲った。



” パサートのくせにエラそうな野郎・・・、アッ! W8だ ”

          

そのテールには誇らしげにW8motionと標されたエンブレムが貼られていた。
そのパサートは太いタイヤや4本出しマフラーなど、通常とは異なる、それでいて抑制的な迫力を醸し出していた。





フォルクスワーゲンW8は、”パサート”という羊の皮を被ってはいるものの、4000t W型8気筒エンジンと4輪駆動を武器にアウトバーンを突き進む、典型的なジャーマンエクスプレスである。最高出力は275馬力と控えめに公表されているが、ドイツ車の常で実際にはもっと出ていると考えた方が良いだろう。
だが、2JZ-GTEを積んだ
アリスト がおめおめと負けるわけにはゆかぬ。
私は追い越し車線に戻ってパサートW8の後に続いた。



パサートW8の車速が徐々に伸びてゆく。オスカー自動車道は、山の中を右に左に、そして上下にうねりながら続いていた。
思った通り、パサートW8は国産リミッターを超える速度に達した。この手のドイツ車との勝負は、正にここがスタートである。



私もふんばってアリストで背後からロック・オンを続けたところ、パサートW8が車線変更して道を譲ってきた。
私はパサートW8を抜き返し、そのまま勝利に持ち込もうとした。



だがパサートW8は、まだ戦闘を放棄してはいなかった。
時々追い越し車線に出てくる一般車のために、我がアリストも速度を上げることができず、パサートW8を決定的に引き離すことができなかったのだ。


    


と、ここでさきほどまで晴れていた天候が急変し、なんと突然夕立の様な強い雨が降り始めた。
バトルの最中になんてことだ。速度を落とさなければスリップして危険だ。



まもなく路面には水たまりができ始め、タイヤが水に乗る恐怖の感触が伝わってきた。
私は気合を入れて攻める走りを続け、できるだけパサートW8の接近を阻止しようと頑張ったが、この状況下では再び喰われてしまうのは時間の問題だ。
なぜなら、ウェットではハイパワーFRであるアリストよりも、FFベースのAWDであるパサートW8の方が圧倒的に有利だからだ。



ドライで勝っていたのにウェットで負けることは屈辱この上ない。しかし意地をはって事故っては元も子もない。ピンチ!
その時、私の目にサービスエリアの標識が入った。



” やたッ! これぞ天恵。トイレ休憩ということであれば負けたことにはならねーよな?、な? ”



私はそう自分に言い聞かせ、我がアリストをサービスエリアに滑り込ませた。
その横を、追いついてきたパサートW8が失笑のまなざしで走り去っていった。




                               
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