2014年2月某日、時刻ふたひとまるまる、インディアブラボーでの夜勤に向かうためキロ・インターチェンジよりマイク自動車道上り線に乗った。
道端には数日前の寒波で降った雪が、腰ほどの高さまで積み重ねられていた。
北西より8〜10ノットの風が吹きすさび、安定性に定評があるとされるBCNR33も時々あらぬ方向に車体を持って行かれそうになる。
冬場の夜間出撃は孤独との戦いでもある。



シエラ峠をのぼり始めた頃、当機のひとせんフィート後方に新たな機影が出現。
そのヘッドライトの光が虹色を帯びて他のクルマより美しく輝いているのが見えた時、私の第六感はバトルを察知した。


    


予感は的中し、正体不明機はおよそ70ノットの速さで、徐々に当機に接近。ついに当機後方みつまるフィートに迫り、当機をロック・オンしてきた。
ルームミラーに映るそのシルエットから、私は瞬時に相手がポルシェだということに気が付いた。
幅広く低い車体に丸いヘッドライトが2つ。ケイマンなどではなく、997型の911であろう。
GT3との戦いから1年以上経っただろうか・・。待ちに待ったポルシェがやってきた。



緊張と興奮により、私の心臓の鼓動は普段の1.5倍の速さに跳ね上がった。
まずはじわじわとアクセルを踏み込んで相手の反応を探ることにした。シエラ峠の長いトンネル内にRB26のエグゾーストが響く。



70ノット → 75ノット。 ポルシェは余裕をもってついてきている。
まるで私がどの程度のものであるか観察されているかのようだ。 



75ノット → 80ノット。 そろそろポルシェさんのスイッチが入るころか・・
いや、当機がポルシェを少し引き離した。来ないのか・・・?



ポルシェのペースはかなり高速であるが、この様子だと、ただ流しているだけなのだろうか。その走りにはあまり殺気めいたものが感じられなかった。
私は33Rを走行車線に戻し、ポルシェを追い越させることにした。
ポルシェが元気よくぶち抜いてゆけば即ドッグファイトに持ち込もうと身構えていたが、ポルシェは時間をかけて遠慮がちに我が33Rの横を抜けて行った。


    

それはオスカー・ナンバーの911カレラ (3.6L 345PS)であった。
4駆(カレラ4)、3.8Lへの排気量アップ(カレラS)、あるいはターボといった ”贅沢な”デバイスを帯びぬ、純粋無垢の911である。
私は多少ぶしつけとは思ったものの、911をいつでもミサイル・ロックできる位置にポジショニングし、アラート態勢を続けた。
しかし、911は私がタンゴICで降りるまで冷静を保ち、危険なお遊びをするそぶりをみせなかった。



                       
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