これはフェラーリ612スカリエッティという超絶スーパーカーと我がGT-Rが高速道で対峙した時の話である。



2013年4月、キロI.Cでマイク自動車道上り線に乗って55ノットでイーストに移動中のことだ。後方から1台の戦闘機が接近してくるのをレーダーでコンタクトした。
緊張が走る。
警戒態勢に入った私は、正体不明機の確認を急いだ。



” 来た・・ ” 


  


” ほう、Z33フェアレディ−か・・・・・ ”




” ・・?! ”



” ウワッ、 ヤバいのキタァ !!  


   
   フェラーリ612スカリエッティ(5.7L V12 540PS 60kg)


ピニンファリナと日本人デザイナー奥山清行氏による優美なアルミ合金ボディを纏い、大人4人の快適な300km/hクルーズを実現するフェラーリの最高級グランツーリズモである。

凄い車に出遭ってしまったものだ。私は週2、3回程の頻度で高速道を利用しているが、フェラーリに遭遇することなど滅多にあることではない。



まもなくフェラーリ612スカリエッティは、高速でわが33Rに接近。そしてフェラーリは、追い越し車線を走る我が33Rの背後にピタリと張り付いて煽ってきた。
ドライバーは、いかにもといった感じの初老の紳士であった。残念ながらこのフェラーリとの一戦は避けがたいようだ・・・。



背後をフェラーリに張り付かれるのは、正直言って、やはり怖いものである。
なに、慌てることはない。いつも通り戦略的に戦えばよい。必要とあらば最終的には150ノットまで付き合う覚悟だ。



パワーや空力など、スペック的には当機が負けている部分は多い。しかし、最高速は単なる馬力勝負ではない。踏み続けるためには、マシンの安定感、信頼性がモノをいう。その点、GT-Rが4駆であることは大きなメリットと思われる。
そして何より、純粋なマシンの性能差で勝負が決まるプロ同士の戦いと異なり、アマチュア同士のストリートバトルにおいては、根性と経験の占めるウェイトが大きい。
ゆえに格上の相手でも最初からあきらめてかかる必要はない。



一方最高速バトルでは、端的に言えば、パワフルなマシンに乗って交通法規を無視した走りをすれば、誰でも300km/h以上で走ることができる。
そのようなカオス状態に陥らないために、自分なりのポリシーを持ち、戦う相手をよく見て、駆け引きを楽しみ、負けるべき時は潔く負けることが最高速ランナーには求められる。


 


話が脱線した。
スカリエッティに煽られた私はアクセルをゆっくりと踏み込んで加速を始めた。
この段階では、まだこちらの手の内を全て見せるわけにはゆかない。
2台は、周囲の車の流れを大きくリードする80ノットに達した。



スカリエッティは、わがGT-Rの直後で半車身ずらし、道を譲るのはまだかまだかと言わんばかりに煽ってくる。
フォーンと甲高いエグゾーストサウンドが聴こえてくる。実に高級なサウンドだ。
2台ともまだ十分な余剰出力を有していることは分かっている。



シエラ峠を前にして、徐々に一般車が少なくなってきた。
準備運動を終えて、そろそろ超高速域に突入しよう。



” スリー、ツー、ワン、ナウ! ”



私は4速からアクセルを床まで踏み込み、2つのタービンに仕事をさせた。速度径の針が80ノットから右に動く。
わが33Rが背後のスカリエッティを引き離してゆく。



” ・・・あれ? おかしい。 フェラーリの野郎、ついてこれねーぞ。 ”



その車間100フィート。まさか、これはまだ彼の射程距離内だとでもいうのか。超絶マシン同士の戦闘では間合いが長くなることを見抜いたうえで遊ばれているのだろうか?
しかし、さらに33Rの速度を上げたところ、スカリエッティはどんどん離れてしまった・・。
その先で一般車の車列に捕まり減速すると、スカリエッティが追いついてきて再びわが33Rを激しくプッシュしてきた。前方がクリアーになって33Rを加速させると、またフェラーリは離れてゆく・・。



やれやれ、さんざん震え上がらせられた私は一人相撲をとっていたようだ。
相手が私を無謀で挑発的な相手とみなして、戦いを回避したのかもしれない。あるいは、わが33Rなどそもそもフェラーリの目に入らなかったのかもしれない。
そこのところは分からないが、つきつめて考えても意味はない。
戦うも戦わざるも自由。最高速バトルに勝利することに意義などない。

                


                           
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