33GT-R vs ホンダ・インサイト


夜勤を終えた私は、インディア・チャーリー自動車道を通って帰宅していた。
朝のラッシュを過ぎた道の流れは閑散として、快晴の天気と相まって平和そのものであった。



やがてマイク自動車道下り線に進み、シエラ峠に差し掛かった頃、後方からER34スカイライン・ターボが我がBCNR33に接近。ER34は、我が33Rをゆっくりと追い越して行った。この時、私は漠然と、R34スカイラインは角ばったスタイリングでカッコ悪いな、けれどもリング状のテールランプはスカイラインらしくて良いな・・などと考えていた。



しばしの間R34について流していると、当機の後方500フィートより1台のマシンが急速に接近中であることをルームミラーで確認。私は緊張に包まれた。
間もなくそいつはやって来た。



” なんだよ、シビックか・・・。脅かしやがって ”


    


追い越し車線上で、R34スカイラインターボに続いて70ノットで快適に走っている我が33Rの後方に、グレーのホンダ・インサイトがもっと速度を上げろと言わんばかりに張り付いてきた。ドライバーは私と同世代の男であった。インサイトはエアロパーツでスポーティーないでたちにドレスアップされていた。



インサイトにケツをつつかれた我が33Rは徐々に速度を上げざるをえず、気を使って長くとっていたR34との車間が縮まっていった。速力75ノット。常識的には十分速く走っていることになるが、アグレッシブなインサイトはまだ満足できない御様子であった。
私の前を行くR34はといえば、これがまたマイペースで、我が33Rとインサイトの様相に気づいているのかいないのか、追い越し車線を塞いだまま道を譲ろうとしない。


       


そうこうするうちに峠区間を抜けて平野に至るも、R34によって抜くに抜けない状況は変わらなかった。
ここで、ついに我慢できなくなったインサイトが左車線から強引に我が33Rをパス、続いてR34もパスし、爆走を開始。
私もインサイトに続いて左車線からR34をパス。勿論この状況を私はシミュレートしており、インサイトの後ろから楽しませてもらおうと考えて、敢えて大人しく走っていたのである。



インサイトの実力を全て見たいので、あたかも引き離されるかのように、インサイトとの車間を広げて追跡する。これは相手に勝利したと誤解させ、さらに速度を上げて頑張らせるための実に隠微な小細工である。背後にピタっと張り付いて圧倒した場合、相手が戦意を失ってしまう可能性があるからである。



逃げるインサイトはぐんぐんスピードを上げ短時間で国産リミッター領域である100ノットに達した。



” おいおい、マジかよ。 超速え・・・ ”



さらにスピードが伸びてゆく。まさかこのインサイト、リミッターを解除しているのか?その走りは、1.8L級ターボマシンに匹敵すると言っても過言ではないものであった。インサイトをただの燃費グルマだと侮っていた私であったが、さすがにGT-Rを煽るだけのことはあると感心した。 


    


家に帰って、インサイトのスペックをネットで調べてさらに驚いた。シリーズ中最も大きい1.5Lのモデルでも、わずかエンジン114PS+モーター14PS に過ぎないのだ。
インサイトのクラスを凌駕する速さは、おそらくVTECによる高回転域のパンチと、空気抵抗の少ないボディ形状によるところが大きいと考えられる。


                    

                         
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