VS Z34フェアレディー


2014年1月某日、私は33Rを駆り、インディアブラボー市に向けてマイク自動車道上り線を巡航していた。
シエラ峠下りの長いトンネルをぬけて200Rの右コーナーを走行中、そいつは瞬間的に背後に迫ってきた。








日産フェアレディーZ (3.7L V6 336PS/37.2kg) 



普段以上に慎重に索敵していた私は、軽い混乱状態に陥らされた。なぜなら、コーナーに侵入する前に後方を確認した時には、敵の機影は認められなかったからだ。

いつもであれば相手の出方をみてから戦闘にエンゲージするが、私は瞬時にギアを4速におとし、アクセルを踏み込んだ。敵の接近スピードがあまりにも速く、撃墜される危険を感じたためである。
当機の交戦意思をあからさまにフェアレディーZに示すことになったが致し方ない。フェアレディーZは車線変更して、無駄だと言わんばかりに我が33Rをきっちり追尾してきた。高速コーナーにおけるそのキビキビとした機動は、私が普段相手をすることの多いジャーマン勢のまったりした挙動と異なり、やはり戦闘機然としたものであった。



前後に連なった2台、80ノットにも達する高速で追い越し車線を走る。
私はフェアレディZが激しく煽って来ることを期待して構えていたのだが、フェアレディZは我が33Rと100フィートほどの車間を保ち、決して下品に煽ってこようとはしない。互いにまだ十分な余剰出力を秘めていることは、もちろん分かっている。やすやすと策にハマってくれるタイプではないらしい。喰えぬ相手だが、意図が読めないだけに猪突猛進タイプの敵よりかえって不気味だ。



一方、相手が攻めてこないのであれば、当機も延々と待つ必要はない。遊びは終わりだ。そろそろケリをつけよう。私はアクセルをさらに踏み込んで100ノットまで加速。


 


ここでミラーで確認すると、追いかけてくるはずのフェアレディZが減速して、わが33Rから急に離れていった。地元民は皆知っているが、彼はどうやらNシステムをオービスと勘違いしたらしい。 そう、フェアレディZはホテルオスカージュリエットナンバーで、都会からはるばるこのマイクシティーに来ていたのだ。



フェアレディーZを引き離した私は、引き続き75ノットのペースで追い越し車線を進んだ。
しかし、― いや、むしろ期待した通り ― フェアレディZは猛烈な速度でわが33Rに再接近してきた。私は先ほどまでフェアレディZにはたして戦意があるのかどうか一抹の疑念を抱いていたが、これで彼が本気であることを確信した。明らかにフェアレディZは国産リミッターを超える速度で私に追いついてきたのだ。



まもなくタンゴICで降りる予定だった私は残念に思った。この混雑した交通量では、フェアレディーZと決着をつけることは不可能であることが容易にシミュレートできるからだ。ベストモータリングなどの情報から判断する限り、フェアレディーZの3.7L V6はBMW 335iに匹敵する、あるいはそれ以上の戦闘力を有している。局地的に一撃離脱できるような相手ではないのだ。



わが33Rの後方に位置したフェアレディーは、なお100フィートもの車間をとってついてくる。背後から煽って威圧するといった、ありがちな粗暴さが一切感じられない。
しかし、わが33Rがロック・オンされているのは間違いない。



・・・ある一定レベル以上の者同士の戦闘においては、今回のようなロング・ボウ化(射程の長距離化)がみられることが特徴である。
敵を至近距離から威圧するといった原始的な攻撃にかわり、距離を空けていてもその洗練された機動を通じて敵を制御する。言わばそうした高次元の戦いへと進化するのである。





仕事に行かずに済むならば、タンゴICで降りずにバトルにつきあって走り続けるのだが、やむを得ない。
タンゴにランディングする時、私が右手の親指を立てて合図した横を、フェアレディーZがバビーンとカッ飛んで行った。







                            
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