2013年5月ある日の夕刻、キロIC手前の国道交差点で、白いW220ベンツSクラスロリンザー仕様が停車しているのが目に入った。
下げられた車高にロリンザー特有の大径ホイールやエアロパーツが近寄りがたい威圧感を発散している。
不穏な予感を抱きつつ、私はそのままマイク自動車道上り線に乗った。
ランプよりR33GT-Rを加速させ本線に合流。速力60knotまで上げて右車線のトラフィックに乗った。
20マイルノースのインディアブラボーを目指し、ベクター045に進む。
 

        


やはり私の不安は的中した。しばらくすると、当機の後方の車が1台また1台と道を空けてゆき、その奥から先ほど見たベンツSロリンザーがライトを煌々と輝かせて接近してくるではないか。思わず私の右足に力が入る。我が33Rの速度は上がり始め、ついに90knotに達した。
しかし、ロリンザーは無駄だと言わんばかりにさらに接近速度を上げて、背後からわがR33GT-Rを煽ってきた。モディファイされたベンツSのグリルに鎮座したCL風の大きなスリーポインテッド・スターが私を威圧してくる。



これはストリートバトルにおいてしばしば目にする心理的戦技の一種であり、逃げる相手を上回る加速力を提示することにより戦意を喪失せしめんとするものである。
重要なことは、冷静な心を維持し、戦意を失わぬことである。



しばらくのあいだ、私は敢えて90knotに速度を抑え、敵の様子を観察していた。
そして、一撃離脱作戦を敢行した。アクセルを一気に踏込み、すみやかにに130ノットまで加速。果たしてミラーに映るロリンザーは小さくなり、戦闘は終結した。



一撃離脱作戦は、彼我の出力差が十分あり、前方に一般車がいないという条件がそろわない限り、推奨されることのない戦技である。ある一定レベル以上の敵に対して一撃離脱を行っても、ネチネチと追いかけられて、逆に作戦失敗によるこちらの心理的な焦りが戦局を不利にするからだ。ではなぜ今回それが成功したかというと、ロリンザーの車高がベタベタであったので、路面から激烈な入力がある超高速域まではついてこれないだろうとあらかじめ予想していたのだ。
 



                          
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