マイク自動車道上り線インディアIC−マイクIC間
を走行中、私より後方の車列の中に、黄色い車体に黒いボンネット、GTウイングを装着した、一目見ただけで走り屋と分かる1台のランエボXを認めた。急いでいるのか、前方の一般車を煽っている。


        


私は彼がわが33Rをターゲットにしていることにすぐ気が付いた。2マイル先の追い越し2車線区間において、彼と一戦交えることになるであろうと。
徐々に緊張が高まる。以前、峠・サーキット時代に焼き付けられたランエボの脅威が、いじめられっ子のトラウマの如く、私の脳裏に蘇る。



      

いよいよ追い越し区間がやってきて道が2車線となった。エボXに先んじて追い越しレーンに入った私は、その気になれば5〜6台後ろにいるエボXが本区間に到達するまでのタイムラグを利用して、一気に離脱することも可能ではあったが、敢えて速力60knotをキープして彼を待つ方針とした。
エボXが追い越し車線に移った。ところが彼の前を走る一般車も追い越し車線に入り、エボXに立ちはだかる格好となった。エボXが酷くイライラしている。
ようやく一般車が走行車線に戻ると、予想した通り、エボXはわが33Rに急接近し、背後から煽ってきた。
では
戦闘開始。3速60knotからアクセルをベタ踏みする。



” どこまで付いてこられるかな? ランエボ君(余裕シャクシャク) ”

” ・・え? これって、もしかして本気で煽られてる? ”

” ア、アカン! ランエボ速えー (涙) ”



さすがにエボXは速かった。引き離すどころかさらに距離を詰めて煽られる。ハイブースト2Lターボの鋭い過渡特性を、ローギアードな設定で余すことなくフルに引き出している。この準高速領域はランエボの最も得意とするところであり、実質的にランエボをしてストリートの王者たらしめる所以である。
一方、上記の如く驚きはしたが、これは無論想定範囲内である。



100knot手前でギアを3速から4速にぶち込み、リミッター域に突入。4速領域に入り、ようやくタービン交換したRB26DETTが本領を発揮する。正確にはブーストアップとの違いが顕著に現れてくる。3速領域では、やや甲高くザラついていた排気音も、本格的に負荷がかかる4速領域になると燃調がリッチになったためだろうか、湿り気のある、モリモリした感じの音質に変化する。



背後に張り付いていたエボXが徐々に離れはじめ、速度が上がれば上がるほど急速に両車の距離が開いていった。恐らく、5速ギアに入れてエンジン回転がトルクバンドを超えたエボXには、もはや余剰出力が残っていないのだろう。ストリートの王者エボXに乗る彼にとって、非日常的な速度域でしか経験することのない厳しい現実である。

         


やがて2台はともにマイクICで降りた。
信号で横に並んだエボXをちらり見た時、前を見据えた若者の表情は固く、信号が青になるや彼はあっという間に走り去って行った。




                                        戻 る







inserted by FC2 system