2013年9月某日朝、マイク自動車道上り線マイク
ICより2マイルウェストにて、我が33Rの後方ひとせんフィートより、1台のレーシングバイクが高速で接近してくるのを確認、私は直ちにアラート態勢に入った。赤い車体にツリ上がったライトを持つそのバイクは、追い越し車線で前車に続いて巡航する我が33Rを走行車線より一気に追い越して行った。


           



”ヤマハ YZF-R1 だ!!”


外観から、リッターSSバイク(排気量1000t以上のスポーツバイク)のヤマハR1と早合点した私は、胸を借りるつもりで勝負を挑むことにした。
私はそれまで本物の激速バイクとの戦闘経験がなかったのだ。
前車が走行車線に戻ったところで勝負開始。我が33Rを加速させる。路面に若干のギャップはあるものの、
1マイル以上にわたり直線が続く。
バイク
のエグゾーストサウンドが甲高い音に変わった。



私は3速べた踏みからシフトを4速に引き込んだ。
しかし、なかなかバイクとの距離が縮まらない。バイクの鋭い加速は、私に500馬力のGT-Rをしてパワー不足を感じさせた。

私は4速でふけ切ったギアを5速に入れて、粛々と踏み続けた。
あとは待てばいいだけだ。彼がサチュレートするのを。何もすることのない時間。恐怖を無視し、ただ右足を床に踏みつけるだけの時間。



まもなく、バイク
130ノットあたりから加速が鈍り、わが33Rはようやく背後をとることができた。
ライダーは、空気抵抗を減らそうと、躰を限界まで小さく屈めていた。


”勝負あり。どいてくれ、道をあけろ”



車線中央付近の彼は動こうとしない。いや、この速度域で彼に直進以外のマニューバを要求することは酷であろうか。
ここで前方に一般車複数有り、両者ともに減速する。バイクはここぞとばかりに一般車の隙間を縫うようかわし、これみよがしに先へと逃れていった。



”ふんッ、SSリッターといえども意外と上で伸びないもんだぜ。次のターゲットはメガスポーツ(隼などのツアラー)か?・・” 



意気揚々と帰宅した私は、相手が600tのレーサーレプリカ、ホンダCBR600RR69PS/5.2kgであることを知った。
その時私の脳裏から、一度はつかみかけたリッターバイクの姿が蜃気楼の如く去っていった。 



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