VS Ferrari 458 Italia
   

2012年10月某日、夜勤を終えた私はマイクヤンキー自動車道を経由して家路を急いでいた。
ふと気が付くと、すでにそのクルマは我が
33GT-R
の後方にピタリと張り付いていた。
夜勤の疲れで不覚にも索敵をおろそかにしてしまったため、私は敵機の急襲に気が付かなかったのだ。

 



” ! ラ、ランボルギーニ・ガヤルド? ” 




” いや、ガヤルドにしては車体の幅が異様に広い・・。 まさか、フェラーリ458イタリアか! ”







その"まさか"であった。


 
Ferrari 458 Italia
4.5litter V8, 578HP/9,000rpm, Length×Width×Height 4527× 1937× 1213o , Wheel-base2650mm, Weight 1380kg

570馬力を発揮する4.5LV8をミドシップにマウントし、最高速325qを実現。 F355、モデナ、F430と続くV8 フェラーリの血統を受け継ぐス−パーマシンである。 




その室内には初老の紳士と奥さんと思われる女性が乗っていた。
フェラーリ458イタリアはわが33GT-Rの背後にぴったり張り付いて煽ってくる。 それはフロントノーズのエンブレムに描かれた黒い跳ね馬がルームミラーを通して明瞭に確認できる程の接近のしかたであった。
素晴らしいスーパーカーとの遭遇は、残念ながらこのような不幸な形で幕開けることになった。



煽られたからといってエキサイトし、焦る気持ちから前方の一般車を煽るなど実に見苦しい。こちらの心理状況をフェラーリに暴露するような振る舞いは厳禁である。
まずは深呼吸し、今後の戦いのシミュレーションを行う。
もう1マイル先に進めば追い越し区間がある
。しかしその追い越し区間は距離が短く、周囲に一般車も多いのでフェラーリとの決着をつけるのは不可能だろう

ならば必然的に勝負を仕掛けるのは、5マイル先でマイク自動車道本線に合流してからになろう。







追い越し区間がやってきた。
先行する我が
33GT-R
は速やかに追い越し車線に移動。続いて当然の如くフェラーリ458イタリアも追い越し車線に出てきた。
道を譲られることを期待していたフェラーリ458イタリアは、カチンときたのか一層激しく我が33GT-Rをプッシュしてきた。
しかしここは左車線に一般車が多くいるので無茶はできない。7
割くらいに抑えて33Rを加速させる。速力
80ノット。
フェラーリ458イタリアをブロックし、我がコントロール下に置く。



こちらの加速に対しても、フェラーリ458イタリアはギチギチに詰めた車間をビタ一文たりとも広げてはくれない。
シュミレーションで予め予期した通りの展開である。
このような時、敵は己の速さを誇示するために車間を広げぬよう細心の注意を払うものだからである。
さらにフェラーリ458イタリアは我が33GT-Rの背後でその車体を右側に半身ずらし、"抜くぞ、どけコラ"と言わんばかりにプレッシャ-を掛けてきた。




こちらの成すべき仕事は、煽られて窮地に追い込まれるふりをしながら敵の戦技を引出して分析し、相手のレベルを冷静に評価することである。 
などと振り返って偉そうに言っているものの、
私とて実際はフェラーリという強敵を前にして緊張と恐怖でハンドルを握る手は震え、こめかみのあたりはジンジンと痺れていたのが現状である。





そこからさらに5マイル南進して、タンゴICでマイク自動車道
本線に合流。カーブを回って本線に乗る。
背後のフェラーリ458イタリアは本戦に乗るやいなや、我が33GT-Rを出し抜いて、追い越しレーンに移り一気に爆走を開始。
素早くわが33
Rをその背後につける。
フェラーリ458イタリアのリアヴューはビックリするほどカッコ好い。いざ、勝負!






アクセルを踏み込み、フル加速して逃げるフェラーリを追跡する。
後追いは楽だ。
意地でもって床に密着させたアクセルペダルを戻さなければいいだけだからだ。
無情に速度が上がり続けた。
当たり前のように国産リミッター域を超え、そこからさらに速度計が右下に動き続けた。
タービン交換したRB26にブーストが掛かり、さらに加速が鋭くなる。



ついに458イタリアは120ノット
付近でサチュレートし、左に車線変更。
私は容赦なくフェラーリ458イタリアをぶち抜いた。

すると458イタリアは戦意を喪失し完全に失速。やがて最寄りのインディア山SAに入っていった。
あっけない結末であったが、フェラーリ458イタリアは助手席に女性を乗せていたのであるから無理もない。

シミュレーションの段階で必ずこのような結果になることを、私は知っていたのだ。



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